アスファルトが白化して見えるほどの強烈な日差し。空気が揺れているのが見えるほどで、バイクのエンジンから伝わる熱と相まって、頭の先まで霞がかっているような感覚に包まれる。
靴の裏が溶けそうなほど熱い道路を走りながら、隣を走るTシャツ姿のドライバーの車が恨めしい。涼しげな格好で快適に走る彼らと、自分との温度差は、物理的な意味でも精神的な意味でも重くのしかかってくる。
そんな真夏の高速道路の渋滞。そして、都会のストップアンドゴー。短パンにサンダル、日傘にうちわという涼しさ全開の歩行者の横で、犬が明らかに足の裏を焼いている。自分はといえば、安全のために全身を装備で覆って、溶けそうなアスファルトの上で信号待ち。
「夏はやっぱり海だよな」なんて思って出かけた自分を、心の中でそっと殴る。海辺は確かに気持ちいい。でも、みんなそう思うから混んでいる。そして日陰はなく、軽装が正解な場所。そこにプロテクターを装着した自分がいた。間違っているのは装備ではなく、季節かもしれない。
そう考えて、冷却ベストを真剣に検討した
200kmを走るような旅では、装備の選択が快適性を大きく左右する。特に真夏は、命に関わるレベルで装備の意味が問われる。
自分は今、KNOX URBANE PRO SHIRT – BLACKを夏用メッシュジャケットとして使っている。プロテクター内蔵で通気性も高く、軽くて動きやすい。ベースはこれで問題ない。
そこに「冷却ベスト」を足すべきかどうかを、今回は本気で考えた。
検討した冷却ベストの種類と、それぞれの印象
ファン付きベスト
数年前に買おうとしたことがあった。渋滞中には効果があるらしいが、走行風の方が強く、ジャケットが潰れて空気が回らないという話を見て見送った。おまけに機能的に生地が空気を通しにくいのでそれも良くない。用途的にも、やはりこれは作業服。バイク用ではない。
ペルチェ式ベスト
未来感はあるし、仕組みも面白い。ただレビューが少ない。ワークマン製品などがあるが、排熱の巻き込みや、冷える範囲の狭さが気になる。首に巻けば涼しい、太い血管があるところが冷えると良い、なんてことも言われているようだけど、それだけで耐えられるほど甘くない。スペック買いではなく、実用レビューをもっと見たいタイプ。
蓄冷剤型ベスト
冷却力は確か。でも保冷材の管理がネック。溶けたら終わり、再冷却が必要、運用が面倒。長距離や連日使用には不向きか。冷やせなかったらどうしよう。
水冷循環ベスト
サンコーやワークマンが出していて、背中に凍らせたペットボトルと水を入れて、冷やした水を循環させるタイプ。理にはかなっているが、冷却水タンクを背中に仕込むのはプロテクターと干渉する。安全性の観点で抵抗がある。プロテクターの上に着たら意味ない。直接冷すものだからそうだよね。
濡らし式ベスト
一番本命だった。水で濡らして気化熱で冷やすタイプ。実際に濡らすのはインナーに当たる部分なのでベストとは違うかもしれないが、RSタイチのリキッドウィンドや南海部品のヴェイパーなどが気になった。リキッドウィンドは専用の冷却水を使うことになっているが水じゃダメなんだろうか。生地を濡らして水分が蒸発するときの気化熱を利用するなら、メッシュジャケットの下に着ている冷感インナーに水をぶっかければ良い気がしてくる。それをコンセプトにしたのがヴェイパーのように思えた。水道水を使って良く、最も手軽で商品説明にもこう書いてあった。
速乾性のあるインナーの上にヴェイパーを着て、アウターに風を通すメッシュジャケットを着る。
https://www.rakuten.co.jp/nankai-brand-shop/contents/vapour/
結局、買わなかった理由
- プロテクターは外せない。冷却装備がそれと干渉するのは本末転倒。
- 管理が面倒。バッテリー、保冷材、水分、どれもツーリング中に気にしたくない。
- 積載量の問題。冷却装備がかさばると、他の装備を圧迫する。
- 使いこなせるか不安。結局、面倒になって使わなくなりそうな予感がしている。
冷却装備は便利だし、ちゃんと使えば効果的だろう。でも、それを使うことによって発生する「管理コスト」が、自分のツーリングスタイルには合わなかった。
ヴェイパーは最も理想に近いのだけど、それだと今着ているメッシュジャケットの下に着ているインナーを濡らすのでもいいような気がした。しかしヴェイパーの保水力は正直すんごい魅力的。
装備を選ばないという選択
本気で調べて、本気で悩んで、それでも今は買わなかった。
快適さと引き換えに、自分が失いたくないものがある。操作性、安全性、装備の軽さ、そして気軽さ。今の装備と、今の自分のバイクとの付き合い方には、冷却ベストはまだ必要ない。
でも、それは今の話だ。来年はわからない。もっと暑くなるかもしれないし、もっとラクな装備が出るかもしれない。
そのときは、また真剣に選び直せばいい。装備は、考えた数だけ自分にフィットしていく。
※この記事には一部アフィリエイトリンクを含みます。選定基準には影響しません。
コメント